RSD/CRPS
「RSD」は日本語で”反射性交感神経性ジストロフィー”と表現されますが、これは旧来の呼称であり、現在は「CRPS」と呼ばれています。
CRPSは日本語で”複合性局所疼痛症候群”と表現され、骨折、組織傷害、神経損傷などによって引き起こされる感覚神経、運動神経、自律神経、情動系および免疫系の病的変化によって発症する慢性疼痛症候群のことをいいます。
骨折や組織傷害が発生すると、交感神経が活性化して骨折や組織傷害を治そうとします。 このとき、神経系に異常が生じて交感神経が過剰に活性化し、骨折や組織傷害が治ったあとも交感神経が働き続けることによって、両手両足に疼痛が生じ、また増幅させていくのです。 概略ですが、これが交通事故被害者がCRPSを発症するに至る機序です。
RSD/CRPSにおける2分類
このCRPSはⅠ型とⅡ型に分類されます。
RSD/CRPSにおける2分類
- Ⅰ型
- 明確な末梢神経損傷が認められない場合(旧来のRSD)
- II型
- 明確な末梢神経の損傷が認められる場合(カウザルギー)
骨折された方の中には、骨が完全に癒合したにもかかわらず、手先や足先に激しい疼痛を生じたり、浮腫を生じたり、皮膚温や皮膚色に変化を生じたり、関節の拘縮や筋委縮、骨萎縮などを生じた方がいらっしゃると思います。
このような方は、整形外科にて治療と検査を受けるだけでなく、麻酔科や神経内科、ペインクリニック内科に転院して治療や検査を受ける必要が出てきます。この点については、主治医の先生の指示説明に従ってください。
認定基準
CRPSの認定基準は、その症状の程度(症状の性質、疼痛の強さ、疼痛発生の頻度や時間)や他覚所見の有無などにより、7級4号、9級10号、12級13号の3つの等級が挙げられます。
RSD/CRPSの認定基準
- 7級 4号
- 軽易な労務以外の労働に常に差し支える程度の疼痛がある場合
- 9級 10号
- 通常の労務に服することはできるが、疼痛により時には労働に従事することができなくなるため就労可能な職種の範囲が相当な程度に成約される場合
- 12級 13号
- 通常の労務に服することはできるが、時には労働に差し支える程度の疼痛が起こる場合
等級認定のポイント
CRPSのうち、特にRSDの立証については、①関節拘縮、②骨萎縮、③皮膚の変化(皮膚恩の変化、皮膚の委縮)や④筋委縮の有無が重点的に見られます。 これらを証明するために、健側と患側を同時撮影したX-P撮影、骨シンチグラフィー、サーモグラフィー検査、両手両足の比較写真の撮影、他に、CTやMRI画像の撮影や神経伝導速度検査や筋電図検査の実施も有用な立証手段といえるでしょう。
CRPSについては難治性のため治療期間が長期にわたることが多々あります。 また、治療期間が長期にわたるからか、保険会社から素因減額の主張をされることがあります。 しかしながら、冒頭で申し上げたように、CRPSは交感神経の異常な活性化に伴って発病するものであり、基本的に素因減額されるべきものでは無いため、発生機序についてしっかり主張立証する必要があります。 最近ではCRPSに対する社会的な認知も広がってきており、裁判例でも素因減額されるべきでないとする事例が増えてきています。
骨折された方や組織傷害を発症した方はもちろん、骨折や組織傷害が治ったけれどもずっと痛みが残っているという交通事故被害者の方は、まず一度、当事務所にご相談にお越しください。