頭部外傷による高次脳機能障害
交通事故によって頭部に外傷を負われた方の中には、事故後に性格が変わってしまったり、言葉が口に出にくくなってしまったり、新たな物事を覚えにくくなってしまったり、数字の計算から仕事の段取りまで、適切な行動をとることができなくなってしまったり、様々な日常生活上の支障を生じている方がいらっしゃると思います。
このような方は、交通事故によって高次脳機能障害を発症したのではないかと疑って早期に適切な画像診断や検査を受けたほうがいいです。
医師が高次脳機能障害と判断していても、交通事故の後遺障害として自賠責保険が想定している高次脳機能障害には当てはまらず、後遺障害等級としては低い等級にとどまってしまうこともあるので注意はしなければなりませんが、それでも早期の対応は必要です。
ここでは、自賠責保険が想定している高次脳機能障害に限定してご説明いたします。
自賠責保険が想定する高次脳機能障害とは
自賠責保険が想定している高次脳機能障害について、真っ先に確認しなければならないのは、①初期の診断名、②初期の意識障害(JCS、GCS数値の確認)、③初期の画像所見です。
例えば、①高次脳機能障害は頭部外傷後の残存症状の一つですので、初期の診断名に頭部外傷を示唆する診断名が無ければなりません。また、②事故直後に意識喪失が無ければ脳や脳機能に与える影響は小さいと判断されることがあります。③初期の画像所見が無ければいくら現在において日常生活に支障があっても「単なる思い違い」と判断されることもあります。
また、上記①ないし③が一定の水準を満たしていたとしても、その後の治療経過で十分症状が回復したという場合もあります。そのような場合には、症状固定時の残存症状が高次脳機能障害として評価されないこととなります。
とはいえ、高次脳機能障害に内包される症状は千差万別ですし、一番のポイントは症状固定時の残存症状というよりも、事故前と事故後、事故前と症状固定時の比較です。
上記①ないし③について一定水準を満たしていて少しでもおかしいと感じられた場合には、真っ先に専門家に相談に行かれることをおすすめします。
高次脳機能障害の立証は弁護士にご相談ください
高次脳機能障害を立証するには、脳や脳機能の障害の有無と、残存症状の程度や因果関係をそれぞれ立証しなければなりません。そして、いずれについても立証の壁は高いです。
脳や脳機能の障害の有無を立証するために、様々な画像撮影が用意されていますが、そもそも画像撮影できる病院が少ないですし、画像撮影できる病院を探し当てても多くの患者を抱えていて協力してくれるとも限りません。医師の仕事はあくまでも治療ですので、なぜその検査が必要なのか、弁護士がしっかりと説明しなければなりません。
一方、残存症状の程度を立証するためには様々な神経心理学テストを受けなければなりませんが、交通事故被害者の日常生活上の支障に応じて複数の神経心理学テストの実施を依頼しなければなりませんので、高次脳機能障害の後遺障害認定申請を熟知している弁護士に依頼するのが得策です。
また、中には途中で病院での治療を辞めて介護施設に入所している交通事故被害者の方もいたりして(介護施設自体は有効な選択肢の一つですが)、そうなってくると後遺障害診断書を書いてくれる医者を探すのも一苦労です。
以上に述べた壁だけでも相当な高さですが、他にも色々な壁がありますので、交通事故後にちょっと人が変わってしまったかもしれないと思ったら、すぐに高次脳機能障害の後遺障害認定申請の知識経験を有している弁護士に相談に行かれることをお勧めします。
高次脳機能障害の交通事故被害者本人やその周囲の人々は、交通事故後の残存症状に苦しんでおり、その症状はずっと続いていくものと思います。
交通事故後の日常生活上の支障に対する補償を適切に受けられるようにするためにも、早期の相談をお勧めします。