死亡事故のご遺族の方が注意する点 ~示談をする前に確認すべきこと~
このページでは、死亡事故のご遺族の方が注意する点、特に示談をする前に確認すべきことについて、弁護士がご説明いたします。
1.示談金額は適正でしょうか
保険会社が提案してきた示談額は適正なものになっているでしょうか。
主婦の方の場合
例えば、主婦の方が亡くなられた場合、保険会社からの示談案では、実際の収入が無いことを理由に逸失利益が計上されていないケースがあります。しかし、実際の収入が無い主婦の方であっても、家事従事者として逸失利益が認められています。
また、保険会社が主婦としての逸失利益を示談案に計上してる場合であっても、基準となる金額が裁判所の基準に照らして著しく低いケースが多いです。
会社員・公務員の方の場合
また、会社員や公務員の方が亡くなられた場合、保険会社からの示談案では、定年退職するまでの期間(多くの場合、60歳まで)の逸失利益しか計上していないことが多いです。しかしながら、多くの裁判例では67歳までの逸失利益が認められており、60歳までの逸失利益では、適正な賠償とはいえません。
高齢者の方の場合
さらに、保険会社からの示談案では、慰謝料が裁判所の基準に照らし、著しく低額になっていることが多いです。これは、高齢者の事故で顕著な様に思います。
このように、保険会社からの示談案は、適正な賠償額に届いていないことも少なくありません。保険会社から示談案が提示された際は、是非一度弁護士にご相談ください。
2.過失割合は適正でしょうか
事故の態様によっては、保険会社が、被害者の方にも過失があったので、その分、示談金を額しますという主張(過失相殺)をしてくることもあります。
保険会社の担当者は、多くの交通事故事案を扱っており、過失相殺に関する知識も豊富です。そのため、一般の方が、保険会社の過失相殺の主張に反論することは困難です。過失が10パーセント変わるだけで、示談金は大きく変わります。
保険会社の主張する過失が適正かどうか是非一度弁護士にご相談ください。
3.亡くなられた被害者の方やご遺族の保険は確認していますか
死亡事故の場合、経済的な給付をご遺族に行うのは、加害者の自動車保険だけではありません。亡くなられた被害者の方やご遺族の方が加入している自動車保険からも保険金の給付を受けることができます。具体的には人身傷害保険という保険が適用になることがあります。
人身傷害保険とは
人身傷害保険は、過失に関係なく、約款で定められた保険金を支払ってくれるので、過失が争点となる事故では、加害者側の保険会社に賠償請求するよりも、早期に経済的な給付を受けることが可能になることが多いです。
ところが、人身傷害保険金を利用できることを知らないご遺族も少なくありません。特に、歩行中の事故だったり、被害者自身が自動車を所有していないために、人身傷害保険が適用にならないと考えているご遺族は多いです。しかし、歩行中の事故も適用になることがありますし、ご家族の保険に人身傷害保険が付いていればそれが適用になることもあります。
当事務所でも、ご遺族の方が人身傷害保険の適用がないと思われており、保険会社からも何の案内もなかったという事案で、弁護士が保険を精査した結果、人身傷害保険が適用されることが判明したケースが複数ございます。
被害者の方に過失がある場合
被害者の方に一定の過失がある事案では、人身傷害保険を利用すると、実質的に過失がない場合と同額の補償を受けることが可能になることもあります。
例えば、被害者の方にも過失が3割認められる事故で、過失相殺前の損害が1億円だとすると、ご遺族が受け取ることのできる賠償金は被害者の過失分3000万円(1億円の3割)を1億円から差し引いた7000万円となります。しかし、人身傷害保険が利用できる場合、限度額にもよりますが、ご遺族の受け取ることのできる補償は過失相殺前の損害と変わらない1億円になることもあります。
そのため、過失のある事故では、人身傷害保険適用の有無が極めて重要になります。過失がある事故の場合、保険が使えるか分からない場合、是非一度弁護士にご相談ください。
4.労災保険や遺族年金について
事故によっては、労災保険や遺族年金の給付が受けられるケースもあります。しかし、これも手続をしなければ受給することはできません。
また、労災保険や遺族年金の受給を受ける場合、示談金との関係も問題になります。労災保険を利用することにより、過失のある事故ではご遺族が受け取る最終的な補償額が増えることもあります。
示談金と労災保険をはじめとする社会保険給付の関係は非常に複雑です。当事務所では、ご遺族が最適な補償を受けられるように労災保険等の社会保険給付についてもアドバイスできる体制を整えています。