2.刑事手続が終了するまで ~被害者参加制度等、加害者に対する対応~
被害者の方を看取ったあと、葬儀の手続や行政関係の手続、相続関係の手続といった諸手続を、残された方々は休む間もなく処理していかなければなりません。
ふと落ち着いたときに、警察官から被害者のご家族あてに電話がかかってくるものと思います。刑事手続の案内についてです。
このページでは、刑事手続についてご説明させていただきます。
加害者が起訴されるまでの間に、ご遺族の方がしなければならないこと
交通事故が発生し被害者がお亡くなりになった場合、その加害者は十中八九、起訴されて何らかの前科が付きます。ただ、多くは逮捕勾留されることなく、6ヶ月から1年ほど経過してから起訴されるため、皆様が想像されるような手続では進行しません。
起訴されるまでの間に被害者のご遺族の方々がしなければならないことは、警察署または検察庁に行って、被害の状況、事故前と事故後の生活の変化、被害感情、加害者の処罰に対する意見を述べることです。
ここで作成された供述調書に基づいて、検察官は加害者を起訴するのか不起訴にするのか、起訴するとして正式裁判を求めるのか略式起訴にするのか、といった点を判断します。仮に起訴するとなった場合には、この供述調書は証拠として刑事裁判で提出され、民事裁判でも有利にも不利にも活用されるため、心のうちを包み隠さず話すべきです。
略式起訴と正式裁判という単語が出ましたが、略式起訴とは加害者を罰金刑に処することを念頭に置いた手続きになります。その日のうちに略式命令という判決が出るため、後述する被害者参加制度は用いられません。
正式裁判となった際の「被害者参加制度」について
一方、正式裁判となったときには、皆様が想像されるような法廷に加害者を呼び出し、加害者にどのような刑罰を下すのが適当か、裁判官と検察官と弁護人とで審理し、裁判官から判断がくだされます。
このとき、被害者も刑事裁判に参加して加害者に対して質問をしたり、裁判官に対して加害者にどのような刑罰を科すべきか意見を述べることができる制度があるのですが、これを被害者参加制度といいます。
被害者の方がお亡くなりになった場合には、その配偶者、直系の親族または兄弟姉妹が被害者参加人として刑事裁判に参加することができます。 被害者参加人ができることは以下のとおりです。
- 刑事裁判に出席することができる(検察官の横に座ることができる)
- 検察官の訴訟活動について意見を述べたり説明を求めたりすることができる
- 証人が情状について証言したときは、犯罪事実に関するものを除き、その証明力(≒信用性)を争うために尋問できる
- 被告人に質問することができる
- 事実または法律の適用について意見を陳述することができる
- もし被害者参加制度を利用したい場合には、加害者が起訴された後に検察官に対して被害者参加制度の利用の申し出をします。その後、裁判所が許可をすれば、被害者参加人として刑事裁判に参加することができます。
なお、当事務所では、交通事故の損害賠償請求をご依頼いただいた被害者やご遺族の方々に対して、無料で被害者参加制度のサポートをさせていただいておりますので、興味のある方は一度ご連絡ください。