はじめに
交通事故の被害者の方をサポートするためには、加害者側の保険会社とのみ交渉していれば良いというものではありません。治療中に、加害者側の保険会社が治療費の支払いを打ち切ってくる、休業損害の支払いを打ち切ってくるということは少なくありません。
このような場合、まずは加害者側の保険会社と交渉をすることになりますが、治療費や休業損害の支払の再開には時間がかかることがあります。そのため、事故による負傷が原因で働ける状態にない被害者の方は、生活に窮してしまい、治療も満足に受けることができないという状況に陥ってしまいます。
しかし、交通事故の被害者の方に、治療費や休業損害を支払うのは加害者側の保険会社だけではありません。労災保険を使って治療費や休業損害を支払ってもらうことが可能な場合もありますし、健康保険の傷病手当の受給を受け、生活費を確保するという方法もあります。被害者の方が加入されている保険(人身傷害保険等)が使える場合もあります。
治療費や休業損害の打ち切り
例えば、通勤中の交通事故で治療を5ヶ月ほど続けたが、症状が軽減しないため、あと2ヶ月ほど治療が必要と医師が判断している状況で、保険会社が治療費や休業損害の支払いの打ち切りを打診してきたとします。
このような場合、まず保険会社と治療継続の交渉をしますが、同時に労災申請の準備をしておき、保険会社からの治療費打切りが確定的になった時点で、労災での治療に切り替え、治療に間が空かないようにしておく必要があります。
当事務所が受任している案件においても、現在は保険会社から治療費、休業損害の支払いを受けておりますが、いわゆるムチウチの症状のため、治療中にもかかわらず、保険会社が治療費を打ち切ってくる可能性を含んでいるものがあります。
仮に、治療費や休業損害の支払いを打ち切られた場合、治療のために働くことができないクライアントにとっては、経済的に大きな打撃になってしまい、治療すら受けることができない状況に陥りかねません。幸い労災適用のある事故でしたので、当事務所では、いつでも労災保険の利用ができるように準備をしているところです。
事前準備の必要性
労災保険からの治療費や休業給付、健康保険からの傷病手当は、収入の減額分を全て補てんしてくれるわけではありませんが、過失割合に関係なく支払われるというメリットもあります。過失割合が大きい事故で、事故当初から労災保険対応になっていない場合、自賠責保険の限度額(120万円)を超えた時点で、保険会社が治療費や休業損害の支払いを打ち切ってくることがあります。
このような場合も、治療の継続と生活費確保のために、労災申請等の準備を予めしておく必要があります。
また、治療が終了したにもかかわらず、残念ながら重度の後遺障害が残った場合には、労災保険に障害補償年金の申請を行う必要がある場合もありますし、行政に身体障害者手帳の交付の申請をしなければならないこともあります。自賠責保険への後遺障害認定申請では後遺障害等級非該当となった場合であっても、労災保険へ障害給付の申請をした場合、後遺障害が認められることがあります。このような場合、労災保険が認定した後遺障害等級をもとに相手の保険会社と交渉することが可能になります。当事務所が受任している案件においても、自賠責保険において後遺障害が認定されたものの、医師の診断や残存している症状からすれば、より高い等級が認定されてもおかしくない被害者の方がいらっしゃいます。
しかし、自賠責保険の基準からすれば、現在の等級以上の後遺障害等級を獲得することは難しい状況です。そこで、残存症状に見合った適正な賠償金を獲得するために、労災保険に障害給付の申請を行い、労災保険でより高い等級を認定してもらったうえで、その等級をもとに交渉を行うこととしました。現在、障害給付の申請に必要な資料を集め、労災保険に障害給付の申請を行い、審査が進んでいるところです。
専門家にご相談ください
このように、交通事故被害者の方をサポートするにあたっては、交渉に強いことや医学的知識が豊富であることは必須の条件ですが、それだけでは十分でありません。労災保険等の手続や多様な保険の仕組みについても習熟している必要があります。
当事務所には、労災保険等の手続や保険の仕組みについて習熟しているスタッフがおります。当事務所は、加害者側の保険会社からの給付のみに頼るのではなく、被害者の方の救済に資するあらゆる制度を利用して、被害者の方をサポートしていきます。