2021年7月7日
損益相殺について
はじめに
交通事故に遭った場合、加害者側の保険会社から支払われる治療費や慰謝料等の賠償金の他に、労災保険や年金からお金が支給されることがあります。労災保険や年金から支給されたお金は、加害者側の保険会社から支払われる賠償金との関係ではどの様に扱われるのでしょうか。
損益相殺とは
交通事故の被害者が事故に起因して何らかの利益を得た場合、その得た利益は原則として、損害賠償額から控除することになります。これを損益相殺といいます。
加害者側の保険会社と最終的に示談する前に、被害者が自賠責保険に被害者請求を行い、自賠責保険から賠償金が支払われていた場合、この自賠責保険からの賠償金は控除の対象となります。健康保険からの傷病手当金、遺族厚生年金、障害厚生年金、遺族基礎年金、障害基礎年金も損害賠償額から控除することになります。労災保険からの、療養給付、休業給付、障害給付、遺族給付、葬祭給付、傷病年金、介護給付についても、支給された金額を損害賠償額から控除することになります。
損益相殺の対象とならない利益とは
このように、被害者が事故に起因して利益を得た場合は、原則として損害賠償額からその利益を控除することになるのですが、事故に起因して得た利益であっても、損害賠償額から控除しなくてもよいものがあります。
搭乗者傷害保険については控除がされませんし、生命保険金も控除する必要がありません。また、交通事故に労災保険の適用がある場合、労災保険から休業特別支給金、障害特別支給金、遺族特別支給金、障害特別年金等の特別支給金が支払われることがあります。この各種特別支給金も損益相殺の対象とはなりません。
交通事故に起因して得た利益であっても、損益相殺の対象となる利益と、損益相殺の対象とならない利益がありますので、交通事故により傷病手当、年金、労災保険等を受給している方は注意が必要です。
損益相殺の対象となる利益をどの賠償項目から控除するか
また、専門的な問題になりますが、交通事故で得た利益が損益相殺の対象となる場合、その利益をどの賠償項目から控除するかという問題があります。大きくわけると、交通事故の賠償金には事故日から年5パーセントの割合で遅延損害金がつくところ、この遅延損害金から控除されていくのかという問題と、決まった費目に対して支給されるお金の場合に、そのお金をどの損害項目から控除するかという問題があります。
これらの問題をどう処理するかで、最終的に得られる賠償金が変わってきます。賠償金が高額な事案や過失相殺がある事案では、その差が大きくなるケースが多いです。
これらの問題については、下級審の裁判例で見解が分かれているケースがあったりするなど、複雑な状況になっており、交通事故を集中的に扱っている弁護士でないと適切に対応できないこともあります。
ぜひ一度当事務所へご相談ください
交通事故により傷病手当、年金、労災保険等を受給している方は、適切な賠償を受けるためにも、ぜひ一度当事務所にご相談ください。