2021年7月7日
2021年7月8日
保険会社と交渉していて思うこと
交通事故を担当していると保険会社と色々な話をする機会があります。その中で、たまに明らかに保険会社の説明が誤っていると感じることがあります。その中のいくつかを以下に列挙させて頂きます。
① せっかく後遺障害の等級認定してあげたのに
これは、既に後遺障害の等級認定が済んでいて、保険会社から賠償金額の提示があった段階で、その金額に不満があるということで相談に来られた方の件で、保険会社の担当者に今後の方針を説明した際に言われた一言です。
この方は、後遺障害として右腕について4級、高次脳機能障害について9級、併合3級と認定されたものの、賠償金額が低額に留まっていたことから、当事務所に相談に来られたものです。医療記録を拝見し、被害者本人と面談した結果、高次脳機能障害について適切な等級は7級、併合2級が適切な等級であると判断致しました。
そこで、当事務所で改めて後遺障害の認定申請をすると伝えたところ「せっかく後遺障害の等級認定してあげたのに」と言われたのです。
後遺障害の等級認定の手続には大きく分けて加害者請求と被害者請求とあり、前者は相手の保険会社に等級認定してもらう手続で、事前認定ともいいます(「一括対応で」と説明してくることもあります)。一方後者は、被害者や被害者側の専門家が独自に証拠資料を集め、被害者側が主導して後遺障害の等級認定の手続を行うというものです。当事務所が実施しているのは後者の被害者請求で、これに真摯に対応できる法律事務所は鹿児島では当事務所ぐらいなものです。
この被害者請求という手続は、非常に手間がかかるのですが、加害者請求よりも適切な等級が認定される可能性が高いです(適切な等級の認定まで約束できるものではありませんが)。 加害者請求を担った「相手方」保険会社の「従業員」に過ぎない担当者が、どこまで後遺障害について詳しいのかという問題もあります。そのため、「せっかく後遺障害の等級認定してあげたのに」は大きな誤りなのです。
② 事故後5ヶ月前後で後遺障害診断書の作成を案内
後遺障害の認定申請に関して言えばもう一つ、事故から5ヶ月経った段階で相手方保険会社から「そろそろ・・・」と治療終了の打診をしてくることがあります。被害者が「まだ痛いので治療を続けたい」と言うと「ここまで治療して治らないのであれば後遺障害として認定される可能性があるから後遺障害診断書を書いてもらってください」と案内してきます。
しかし、この話に安易に乗ってはいけません。なぜならば、治療期間が5ヶ月程度では、軽傷とみなされるのか、後遺障害として等級認定されることは殆ど無いからです。そして、一度後遺障害診断書が作成されてしまうと、その瑕疵を回復することは困難です。
後遺障害として等級認定されることが殆ど無いにもかかわらず「後遺障害として認定される可能性があるから」と言って治療終了→後遺障害診断の案内をすることは、誤った説明であると私は考えています。
このように、保険会社の説明の中には、多くは合っているのかもしれませんが、誤っている部分が含まれています。
保険会社の説明には安易に同意することなく事前に法律事務所に相談に行かれたほうがいいです。
どんなに親切な対応をしていても、相手の保険会社はあくまでも「相手方」で、できる限り保険会社から支出されるお金を減らそうとします。特に3ヶ月以上治療が続いている件で保険会社とやり取りされる際には、慎重に対応されることをお勧めします。