2021年7月7日
2021年7月8日
自動車対大型バイクの裁判例 -基礎収入の算定(3級3号)-
東京地判平成26年12月24日の裁判例
今回御紹介するのは、東京地判平成26年12月24日自保ジャーナル1940号46頁です。
事故態様は、大型自動二輪車が片側2車線の第2車線を進行していたところ、道路に接する駐車場に後退進入するため切返し中であった普通乗用自動車が二輪車の進路を妨害する形になり、両車両が衝突したというものです。
この事故により、二輪車運転手は頸髄損傷、四肢麻痺、左膝挫傷(神経損傷)、頸髄損傷による神経因性膀胱の傷害を負いました。 そして、後遺症は脊髄の障害によるものと認められ、3級3号に該当するとの後遺障害等級認定を受けました。
問題の所在
この裁判で問題になった点のうち、後遺障害逸失利益を取り上げます。
二輪車の運転手は、歯科医師でしたが、事故の3年前に靱帯損傷、尿管結石、腎梗塞、腎動脈瘤が発症し、歯科医師として仕事ができない期間がありました。 事故の前年は、事故の3年前の約2分の1の所得額にまで落ちていました。 当然、保険会社は、事故の前年の収入を、後遺障害逸失利益算定における基礎収入とすべきだと主張しました。
裁判所の認定
実は、二輪車の運転手の体調は、事故前年には診療ができるところまで回復していました。回復過程にあったところ、この事故に遭ったのです。
そこで裁判所は、事故前年から3年前までの各年の所得の平均額を基礎収入として後遺障害逸失利益を算定しました。事故前年の所得と比較すると、約1.3倍です。
事故の直前、特殊事情により減収があったものの、その特殊事情がなくなりつつあるときに事故に遭われた場合は、その特殊事情を除いて基礎収入を考慮することが必要だということを、改めてこの裁判例は教えてくれます。
その他
この判決では、二輪車の運転手は2億3000万円弱の賠償を受けるべきであるという結論が示されました。
事故に遭わず、また後遺症がないのが一番であることは分かり切ったことです。ですが、重い後遺障害が残ってしまったときには、適正な賠償を受けなければなりません。そうでなければ、被害者は二重に苦しむことになってしまいます。