自転車事故について
1.

サイクリングブームもあり、ロードバイク等のスポーツ用自転車に乗る方も増えています。それに伴い、自転車の事故の相談も増えているように感じます。 自転車と自動車の事故で自転車の運転者が負傷した場合は、自動車の運転者に損害賠償請求することになりますし、自転車と歩行者の事故で、歩行者が負傷した場合は、自転車の運転者は歩行者の損害を賠償しなくてはなりません。
最近は、自転車と歩行者の事故で、歩行者が亡くなられたり、重度の後遺障害が残存するなどして、自転車の運転者が高額の賠償責任を負う裁判例も見かけます。
2.
ところで、自転車が道路の凸凹にはまって転倒し、運転者が怪我をしたという場合、これは、だれが責任をとるのでしょうか。
自損事故ということで、全て本人の責任になるのでしょうか。ロードバイクは、タイヤも細く、道路の凸凹にはまりやすいです。また、スピードも出るため、凸凹にはまり転倒した場合は、大けがにつながりかねません。
道路の凸凹によって、転倒した場合、誰に責任を追及できるのか検討します。
3.
国家賠償法2条1項において、「道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。」と規定されていることから、道路の凸凹等が原因で負傷した場合は、道路を管理する国や地方公共団体に損害賠償請求することになります。
このときに問題になるのが、道路の凸凹等が「瑕疵」に当たるかということです。「瑕疵」とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いている状態をいいますので、道路の凸凹等が、この状態にあたるか検討することになります。
裁判例を見てみると、ロードバイクの事例では、神戸地裁平成24年3月13日判決があります。この事例は、ロードバイクが道路左端1メートルの個所に存在した長さ95センチ、最大幅41センチ、最大深さ6,4センチの穴ぼこにタイヤをとられ転倒したというものです。
この事例において、裁判所は道路が通常有すべき安全性を欠いていたと認定し、道路管理者である県の責任を認めました。
もっとも、前方を注視していれば、穴ぼこの存在に気付くことが可能であったとして、自転車運転者の過失を5割として過失相殺しています。
また、ロードバイクにとって危険なのは穴ぼこだけではありません。グレーチング(側溝等の鉄の蓋)の溝にタイヤがはまり、転倒することもあります。
グレーチングの隙間に自転車のタイヤが挟まって転倒した事例として大阪地裁堺支部平成元年1月31日判決があります。この事例は、グレーチングとグレーチングの間に4.2センチの隙間があり、その隙間にタイヤがはまり転倒したというものです。裁判所は、この隙間を瑕疵と認め、管理する地方公共団体の賠償責任を認めました。
また、ロードバイクの事例では、京都地裁平成26年11月6日判決があります。この事例は、グレーチングとグレーチングの間に2.5センチの隙間があり、その隙間にタイヤがはまり転倒したというものです。この事例は、地方公共団体側が瑕疵に当たるかどうかという点を積極的に争わなかったようで、主な争点は、自転車側の過失となっています。
裁判所は、本県道路の瑕疵の程度はさほど大きなものとはいえないところ、被害者には、キープレフト原則に従う義務及び交差点右折時の道路側端に沿って徐行する義務に反していた旨判示し、自転車側の過失を20%と認定しています。
4.
以上のように、自転車が道路の凸凹にはまって転倒し、負傷した場合、国や地方公共団体に損害賠償請求できることがあります。
注意しなくてはならないのは、穴の大きさが何センチ以上だから瑕疵がある、グレーチングの隙間が何センチ以上だから瑕疵があるとはならないことです。
というのは、営造物が通常有すべき安全性を有しているかどうかは、営造物の構造、用法、場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合顧慮して個別具体的に判断するためです。すなわち、凸凹が瑕疵に当たるかどうかは、何センチ以上の穴なら瑕疵に当たると一律に判断されるということではなく、道路の具体的な状況から判断されるのです。
そのため、道路の凸凹等で転倒し、負傷したという場合は、法律の専門家である弁護士に相談し、その凸凹が瑕疵に当たるかアドバイスを求め、場合によっては、交渉や裁判を依頼した方が良いといえます。
5.
負傷した場合には、後遺症の程度も問題になってきます。
保険が後遺障害等級を認定してくれますが、このような道路で転倒した事故では、後遺障害等級を認定してくれる機関はありません。そのため、診療録等の医学的資料から、どの程度の後遺症が残存しているかということを立証していかなくてはなりません。当事務所は、交通事故の被害者側代理人として培った後遺症立証のノウハウを多く有しています。
自転車で転倒して負傷したという場合は、ぜひ当事務所にご相談ください。
費用一覧
- 相談料
- 30分5,000円
- 弁護士費用
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着手金 20~50万円
報酬金 経済的利益の10%~
※事案の難易度等によって異なります。また、相談者の方のご事情によっては、着手金の減額等も可能です。まずはお気軽にご相談下さい。