2024年8月22日
2024年8月22日
目次
1:バイクのすり抜け事故とは
バイクのすり抜け事故とは、バイクが自動車と自動車の間をすり抜ける際に自動車と接触・衝突することで起きる事故です。バイク事故の多くは、このようなすり抜け時に起きていますので、バイク運転者は注意が必要と言えます。
すり抜け行為とは?追い越しと追い抜き
ところで、すり抜け行為とはそもそも何を意味するのでしょうか?
道路交通法には、「すり抜け」という言葉は出てきませんが、「追越し」については規定が定められています。これによれば、「車両(注:バイクも含みます。)が他の車両等に追い付いた場合において、その進路を変えてその追い付いた車両等の側方を通過し、かつ、当該車両等の前方に出ること」が追越しと定義された上で、「車両は、他の車両を追い越そうとするときは、その追い越されようとする車両……の右側を通行しなければならない」とされます(道路交通法2条1項21号、28条1項)。
簡単にいえば、進路(車線)変更をして前方の車両をその右側から追い越すことが、道路交通法上許容された追い越しといえます。
これに対して、進路(車線)を変えずに前方車両のすぐ横を追い抜いていく行為は、道路交通法上に規定がないものの、「追抜き」と呼ばれます。このような行為が、すり抜け行為です。
すり抜け事故が多い理由・危険な理由
追い抜き・すり抜け行為は、車線を変更しないので、より前方車両との距離が近くなることから、事故発生リスクが高まる走行方法であるといえます。
バイクからすると、前方車両を見ながら運転しているため安全に感じるかもしれません。しかしながら、追い抜かれる自動車の運転手側からすると、バイクが各ミラーの死角に入ることがあるため、事故が多くなります。
また、自動車がバイクに気付かないままに走行してバイクと衝突・接触することとなるため、事故によってバイクの運転者に大きな怪我が生じる危険も高いです。
このように、バイクのすり抜け時には事故が起こりやすく、かつ、傷害結果も重くなる可能性があるので、バイクの運転者としては、できるだけすり抜け行為をしないことが重要でしょう。
2:【どっちが悪い】すり抜け事故の過失割合
さて、すり抜け事故が起きた場合、バイクと自動車、どっちが悪いといえるでしょうか?
過失割合の基準と判断方法
以下では、過失割合の基準と判断方法について、事例別にご説明します。
過失割合の事例
前方車両を追い抜いたときの事故
バイクが前方を走る自動車を追い越したとき・追い抜いたときの事故については、原則的な過失割合がバイク:自動車=80:20とされます。この場合の事故に関しては、バイクの方が、相当程度過失が大きいと判断されるといえます。
なお、前方車両が停止しているときにバイクが事故を起こした場合には、自動車に過失が認められないので、原則的な過失割合はバイク:自動車=100:0となります。
左折車とバイクのすり抜け事故
バイクが前方を走る自動車を左側から追い抜いた場合、自動車の左折に巻き込まれることが多いです(左折巻き込み事故)。この場合の原則的な過失割合は、バイク:自動車=20:80とされます。
このような事故では、バイクの運転者が自動車の下部に入り込んで轢過(れきか)されることがあり、多数の骨折や内臓破裂を伴うような大事故になることがあるため、注意が必要です。
対向車線から追い抜いてきたバイクと右折車両の接触
バイクが前方を走る自動車を左側から追い抜いた場合、対向車線から右折してくる自動車と衝突・接触することがあります(右直事故)。この場合の原則的な過失割合は、バイク:自動車=15:85となります。
このような場合、自動車の運転者は事故直前までバイクに気付かずにいることが多く、特に減速することなく衝突する事例が多いです。このため、この事故態様でも、バイクの運転者が大怪我をする可能性が高いです。
車の開いたドアとバイクのすり抜け事故
バイクが自動車の横をすり抜ける際に、開放された自動車のドアと衝突した場合、原則的な過失割合は、バイク:自動車=10:90となります。この事故では、自動車側のドアの交換を要することがあり、自動車側の物的損害額が大きくなるため、過失割合が10%変わるだけでも金額変動が大きいです。
なお、衝突直前に自動車がドアを開けた場合には、過失割合は0:100となります。
著しい過失、重過失がある場合の修正
これらの過失割合はあくまでも原則的なものであり、バイク・自動車の運転者に著しい過失・重過失がある場合には、過失割合の修正がなされます。この場合、過失の認められた方に5~20%の過失割合が追加されることがあります。
どのような場合に著しい過失・重過失があったとされるかは、これまでの類似の裁判例や法令などを調査の上、判断する必要があります。このため、この点については専門家である弁護士に相談をするべきといえるでしょう。
3:すり抜け事故が違法になるケース
上記の事例・ケースと異なり、すり抜け行為・追い越し行為に違法性が認められる場合には、バイクの過失割合が増えることとなります。バイクの運転者としては、この点に留意し、違法なすり抜け行為・追い越し行為をしないようにする必要があります。
以下、違法とされるすり抜け行為・追い越し行為を列挙します。
追い越し禁止場所における追い越し
追い越し禁止場所における追い越しは、当然違法となります。追い越し禁止場所は、標識で追い越し禁止と表示された場所のほか、白色又は黄色の実線で車線が区切られている箇所となります。また、曲がり角付近、トンネルの中、交差点・踏切・横断歩道などの上とその手前30メートル以内の箇所も、追い越し行為が禁止される場所となります。
割り込みによるすり抜け
また、信号などで停止している車両の側方を通過して前方に割り込むことも、道路交通法上禁止されているため、違法となります。
停止違反・信号無視
もちろん、一時停止規制・赤信号等を無視して走行してすり抜け行為をすることも違法です。
このような行為をして交通事故を引き起こすと、バイク側に相当程度不利な過失割合による解決がなされることとなります。
路側帯を通っての追い抜き
また、路側帯を通って前方車両を追い越す行為も違法です。
路側帯とは、「歩行者の通行の用に供〔するため〕……、歩道の設けられていない道路又は道路の歩道の設けられていない側の路端寄りに設けられた帯状の道路の部分で、道路標示によって区画されたもの」(道路交通法2条1項3号の4)を指します。要するに、歩道のない道路の端で、歩行者用に白線などで区切られた区画を意味します。
車両は路側帯がある車道では、車道を通行しなければならないと規定されている(道路交通法17条1項本文)ため、路側帯を通る追い越し行為は禁止されているといえます。
4:事故後の対処法
さて、バイクを運転してすり抜け事故が起きた場合には、どのように対処するべきでしょうか?
以下、ご説明いたします。
事故後にすべき基本的な対応
交通事故が起きた場合には、警察への報告義務・救護義務が課されます(道路交通法72条1項)ので、まずは警察へ通報し、怪我をした人がいれば、救急車の手配等の救護措置をとる必要があります。警察が来た際には、お互いの連絡先を交換するように言われることもありますから、相手の電話番号を聞く、免許証を写真で控えさせてもらうなどしておいた方が、その後の賠償の交渉がスムーズに進みます。
交通事故後の症状は、特に首のむちうち・頸椎捻挫であれば、事故後数日経ったのちに症状が出ることもあります。また、事故による神経損傷は、外側から見て分かるものでもありません。このため、事故直後に痛みを感じない場合でも、遅くとも事故翌日には病院を受診し、MRI等の検査を受けることが有用でしょう。
また、あなたが任意保険に加入している場合には、保険会社にも早い段階で事故発生の報告をした方が良いでしょう。
保険会社が提示する過失割合が正しいとは限らない
その後、あなたが加入する任意保険会社と、相手方が加入する任意保険会社(相手方が無保険であれば相手方本人)とが、過失割合について協議・交渉を行うこととなります。
しかしながら、ここで相手方保険会社が提示してきた過失割合が正しいとは限りません。事故の具体的態様や、事故時の周囲の環境次第では、過失割合があなたに有利に修正される可能性がありますから注意が必要です。
弁護士による分析とアドバイス
相手方保険会社から提示された過失割合が正しいかどうか分からない。このような場合にこそ、交通事故を専門とする弁護士による分析とアドバイスが必要といえるでしょう。弁護士に事故態様などの事実を伝えて適切な過失割合について助言を受けましょう。
また、損害額(特に慰謝料)が低額の提示に留まっている場合も多いです。慰謝料については、裁判による基準の2分の1程度の提示しかなされていない可能性が高いですから、弁護士から適正な金額を聞くことが重要といえます。
納得できない場合の対処法
さて、弁護士から助言を受けて適切な過失割合・損害額を知ったとしても、相手方保険会社がこれに応じてくるとは限りません。相手方保険会社からの提示に納得ができない場合には、弁護士に交渉を依頼し、訴訟まで見据えた活動を行ってもらうべきといえるでしょう。
弁護士が介入するだけでも、損害額については裁判基準に近い金額の提示を受けることができる事例が多いです。
保険会社との交渉のポイント
もしご自身で保険会社と交渉する場合には、弁護士から受けた助言をもとに交渉を行うべきといえます。この場合には、ご自身が適切と考える過失割合について根拠と共に主張を展開する必要があります。
交渉がストレスとなってしまう場合や、仕事などの関係で交渉を行うこと自体が困難である場合には、早々に弁護士に依頼するべきといえます。
5:バイクのすり抜け事故で弁護士に相談するメリット
バイクのすり抜け事故の交渉においては、過失割合の問題やすり抜け行為自体が適法であったかどうかなど、交通事故訴訟の実務から道路交通法などの法令理解まで、専門性の高い知識が要求されます。また、事故による怪我が重い場合には、訴訟による解決が適切な場合もあります。
このため、交通事故に慣れた弁護士に相談し、早い段階から交渉対応を任せてしまった方が、よりよい解決を図ることが期待できるでしょう。
6:バイクのすり抜け事故に遭遇しお困りの方は弁護士へご相談ください
以上のとおり、バイクのすり抜け事故に関して解説いたしました。バイクのすり抜け事故に遭遇してお困りの方は、交通事故事件を多く取り扱う当事務所に、ぜひご相談ください。