2021年7月9日
2021年7月9日
高次脳機能障害と医師面談に関する重要性
症状が残っていて治療に行きたいと思っても、いつまでも加害者側の保険会社の負担で治療できるわけではありません。 どこかで「症状固定」となり、症状固定日以降で治療に行きたい場合には健康保険等を使って自費で治療に行かなければなりません。
このとき、適切な後遺障害等級が認定されなければ、その後の生活に不安を残し、満足に治療に行けないことが多いです。 適切な後遺障害等級の認定のためには、治療期間中の全ての医証を精査したうえで、症状固定時の残存症状を的確に拾い上げて、受傷直後から症状固定時までの症状の一貫性と連続性を証明または説明できるようにしなければなりません。
【レポート03】高次9級から7級へ
保険会社で後遺障害等級の認定を行って併合3級(高次脳機能障害が9級、他に4級の後遺障害があり、併合3級となったようです)という比較的高い等級が認定されたものの、提示された賠償金額に納得がいかず、当事務所に相談に来られました。
<サポート内容>
当事務所で治療期間中の全ての医証を精査したところ、提示された賠償金額や過失割合以上に、そもそも認定された後遺障害等級が誤りではないかと疑問を抱き、まず後遺障害等級を上げるようにしました。
加害者側の保険会社は等級が上がることは無いと思っていたようですが、医師面談や医療照会を重ねた結果、高次脳機能障害について9級との認定は誤りであり、7級が妥当であるとの判断を受けました(他に4級の後遺障害があり、併合3級から併合2級になりました)。
このときのポイントは、もともと保険会社で行った後遺障害等級認定に際しては、高次脳機能障害よりも、4級と認定された後遺障害のほうに焦点が置かれ、高次脳機能障害の立証のための十分な資料が提出されていなかったため、まず高次脳機能障害立証のための不足医証を補完しなければならない、という点がありました。
特に、高次脳機能障害に起因してどれほど日常生活や社会生活、仕事上に支障を来していたのかを、医師の見地から説明して頂きたかったので、様々な角度から投げかけた質問をまとめた医療照会を作成しました。
その上で、医師面談を行って、日常生活においてはどうか、社会生活においてはどうか、仕事をしていくに当たってはどうか、というように視点を分けて回答してほしいと説明し、医師の快諾を得て、医療照会に対する回答を受領いたしました。症状固定日からも最終通院日からも相当程度時間が経過していて、医師の協力がどこまで得られるか不透明でしたが、丁寧に趣旨を説明させて頂くことによって、十分な回答を得ることができました。
この医師の回答をもって異議申し立てをしたところ、後遺障害等級が併合3級から併合2級にあがったという成果を得ることができております。
<まとめ>
この案件は、もともと適切な後遺障害等級が認定されていなかったものである一方、交通事故被害者やそのご家族の方は認定された等級が適切な等級と思い込んでおり、それがたまたま「提示された賠償金額が適切かどうか判断してほしい」ということをきっかけに、「適切な等級ではないのではないか」という気づきを得ることができました。 そして、「気づき」を得ても医師の協力が得られなければ、きっと後遺障害等級は上がらなかったと思いますが、今回の件は症状固定日や最終通院日から相当程度時間が経っていたにもかかわらず、幸いにも医師の協力を得ることができました。
つまり、保険会社の説明を鵜呑みにしたままにしていれば、そして医師の協力が得られなければ、適切な後遺障害等級は認定されなかったのです。適切な後遺障害等級の認定のためには、症状固定日前に専門家に依頼して、最初の後遺障害認定申請に向けて十分な医証を集めておくことが大事です。専門家に相談する時期早ければ早いほど良く、早ければ早いほど証拠の散逸を防ぐことができますし、医師の協力も得られやすいです。等級が上がれば得られる賠償金の見込額が上がるだけでなく、新たな損害項目が請求できることもありますが、やみくもに異議申立をしても等級は上がりませんし、かえって失敗に終わる可能性が高まるので注意が必要です。
適切な後遺障害等級認定のためには、最初の後遺障害等級認定申請時に適切な医証を提出すること、適切な医証の収集のためには効果的な医療照会と、医師の協力を得るための医師面談が大事であることを覚えておいてください。