2021年7月7日
2021年7月9日
B型肝炎訴訟の枠組み
B型肝炎訴訟の枠組み
先日、B型肝炎訴訟の歴史をご紹介させていただきましたが、今回はそのB型肝炎訴訟の枠組みについてご説明させていただきます。
B型肝炎訴訟は、B型肝炎被害者救済のための弁護団の多大な尽力があって、国が、集団予防接種等の際の注射器等の連続使用により、B型肝炎ウイルスに感染した被害者の方々に甚大な被害を生じさせ、その被害の拡大を防止しなかったことの責任を認めました。
それに伴い、国はB型肝炎被害者から訴訟を提起された場合、概要以下の資料が提出されることを前提として、和解に応じることを「基本合意書」で定めています。
提出が求められている資料とは
提出が求められている資料を抜粋すると、以下のとおりとなります。
(1) B型肝炎ウイルスに持続感染したことを証明する血液検査結果の原データ
(2) 7歳になるまでに集団予防接種等を受けたことを証明する以下のいずれかの資料
- 母子健康手帳の原本
- ①を提出できない場合、予防接種台帳
- ①②を提出できない場合、以下の資料をできる限り
- 母子健康手帳のコピー
- 上記①②を提出できない理由を記載した陳述書
- 種痘またはBCGの接種痕が残っていることを確認した医師の意見書
- 出生から満7歳になるまでの住民票または戸籍の附票の写し
- 予防接種台帳に当該被害者に関する接種記録の記載がないことを証明する市区町村発行の証明書
(3) 以下の医療記録のうち現存するもの
- B型肝炎について現在診療を受けている医療機関の医療記録のうち、提訴日からさかのぼって1年以内のもの
- B型肝炎ウイルスの持続感染が判明したとき以降1年分の医療記録
- 肝炎発症者はその最初の発症時以降1年分の医療記録
- 肝疾患による入院歴がある場合には、その入院中の全ての医療記録
(4) 母子感染による持続感染ではないことを証明する以下の資料
- 当該被害者の母親の血液検査の原データ
- 上記①の検査の被験者が当該被害者の母親であることを示す当該被害者または母親の戸籍または除籍謄本
- 母親が死亡している場合、その除籍謄本
- 当該被害者の年長の兄姉の血液検査結果の原データ及びその検査の被験者が当該被害者の年長の兄姉であることを示す戸籍または除籍謄本
(5) 当該被害者がB型肝炎ウイルスに由来する肝がん、肝硬変または慢性肝炎を発症した場合は、その発症したことを証明する血液検査結果、病理組織検査、その他の検査の原データを含む医療記録
なお、集団予防接種等の際の注射器の使い回しによってB型肝炎ウイルスに持続感染した母親からの母子感染により持続感染した(いわゆる「二次感染」)と主張する場合には、提出を要する資料は若干異なってきますが、ここでは割愛します。
上記(1)ないし(5)を提出して、B型肝炎ウイルスの持続感染の事実、満7歳になるまでに集団予防接種等を受けたこと、集団予防接種等で注射器を連続で使用したこと、母子感染でないこと、その他集団予防接種等以外の感染原因がないこと、といった点を立証できれば、国から障害区分に応じて50万円から3600万円までの和解金額が支払われます。
弁護士へ相談されることをお勧めします
この基本合意書とともに平成24年1月13日から「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法」が施行され、B型肝炎被害者はこの施行日から5年以内に国に対して訴訟を提起することが求められていました。しかし、諸々の社会的事情があって、この期限はさらに5年延長されています。
もしお近くにB型肝炎と診断された方がいらっしゃいましたら、無症状であっても和解金が支払われることもありますので、直ちに弁護士のところに相談に行かれることをお勧めします。