死亡事故の慰謝料について
死亡事故において、大きな損害項目の一つは、慰謝料です。
慰謝料は、亡くなられた被害者やその遺族が被った精神的苦痛を慰謝するための賠償金です。
死亡事故の場合、慰謝料の金額はどの程度が適正なのでしょうか。
保険会社によっては自賠責保険の基準で算定した慰謝料を提示することもあります。
死亡事故における自賠責保険の慰謝料は最大でも1300万円ですが、人命が失われていることを考えれば、被害者や遺族の方の苦痛を慰謝するものとして十分とはいえません。また、死亡事故においては、保険会社が提示する慰謝料が、自賠責保険の基準を上回っていたとしても、裁判所が認定する適正な慰謝料よりも低額であることが少なくありません。
裁判所が認定する死亡慰謝料の金額
1 裁判所が認定する死亡慰謝料の目安は次のとおりです。
一家の支柱 2800万円
母親、配偶者 2500万円
その他(独身の男女、子供、幼児等) 2000万円から2500万円
上記が裁判所が認定する一応の目安になりますが、亡くなられた方の生前の様子、ご家族との関係等具体的な事情によって、慰謝料の金額は大きく異なってきます。上記目安を超える慰謝料を獲得できるだけの事情を主張・立証できるかが、弁護士の腕の見せ所となります。
以下、死亡慰謝料についてご説明します。
2 死亡慰謝料は誰が請求するのか
(1)亡くなられた方の相続人
死亡慰謝料は、まず亡くなられた被害者本人に発生し、これは相続の対象となります。 したがって、被害者本人の慰謝料請求権を相続した相続人が慰謝料を請求することになります。
(2)一定の関係にある親族
死亡事故の場合、被害者と一定の関係にある親族も被害者が亡くなったことに対する慰謝料を加害者に請求できます。すなわち、民法711条は、「他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない」と規定しており、これにより被害者の父母、配偶者及び子どもについては、被害者本人の慰謝料とは別に、慰謝料を請求することができます。
また、民法711条は、慰謝料を請求できる者を「被害者の父母、配偶者及び子」としていますが、近親者としての慰謝料を請求できる者は、父母、配偶者及び子に限定されるわけではないと解されています。判例では、被害者との間に「被害者の父母、配偶者及び子」と実質的に同視することができる身分関係が存在すれば、遺族固有の慰謝料を請求できるとしています。したがって、内縁の配偶者、被害者の兄弟姉妹、祖父母についても遺族固有の慰謝料が請求できる可能性があります。
遺族固有の慰謝料の金額については、具体的な事情によって異なりますが、多くの裁判例では遺族一人につき、100万円から400万円の範囲で認定しているようです。しかし、裁判例の中には、遺族一名に600万円の慰謝料を認めたものもあります。
なお、前記1の裁判所が認定する死亡慰謝料の目安の金額は、死亡慰謝料の総額であり、遺族固有の慰謝料を含んだ金額になります。
3 子供の死亡事故の慰謝料
子供の死亡事故については、前記1の分類によると「その他」に当たりますので、慰謝料の相場は、2000万円から2500万円となります。しかし、これは、若くして人生を奪われた若年者の慰謝料として低額すぎるのではないかと思われます。また、お子さんを亡くされたご両親の悲しみ、悔しさは筆舌に尽くしがたいものがあります。
裁判例では、2000万円から2500万円の間で慰謝料を認定するものも多いですが、遺族固有の慰謝料も含めて2800万円以上を認めた裁判例もありますし、3300万円を認定した裁判例も存在します。
事故の悪質性や、遺族の悲しみの深さ等を具体的に主張、立証していくことにより、裁判所の基準を上回る慰謝料を獲得することが可能となります。
4 高齢者の死亡事故の慰謝料
高齢者の死亡事故については、加害者側の保険会社からは1300万円程度の慰謝料が提案されることが少なくありません。これは自賠責保険で設定している死亡慰謝料の上限額(遺族の慰謝料含む)とほぼ同じで、上記1の裁判所の基準と比べても著しく低額です。保険会社に慰謝料が低額である理由を尋ねると、高齢であり余命も長くないからという趣旨の回答がされることが多いです。
しかし、高齢者であっても生命の重さに変わりはないはずであり、高齢であるという理由だけで慰謝料を減額することは許されないはずです。
高齢者の場合は、前記1の裁判所基準では慰謝料の上限額が2500万円となりますが、被害者の生前の様子や、遺族の関わり方等を具体的に主張・立証することにより2500万円を超える慰謝料を獲得できる可能性もあります。実際、裁判例では、高齢者の死亡事故において、遺族固有の慰謝料を含めて、2800万円の慰謝料を認めたものもあります。
5 金額が適正か、アドバイスをさせていただきます。
死亡事故において保険会社から賠償金の提示があった際は、是非一度当事務所にご相談ください。慰謝料も含め、保険会社からの賠償金の提案が適正かアドバイスさせて頂きます。
死亡事故の慰謝料は上記1の金額が、一応の目安とされていますが、亡くなられた方の生活状況、家族との関係等といった具体的な事情によって増減します。当事務所では、亡くなられた方の事情、遺族の悲しみ等を具体的に主張、立証することを心がけ、上記目安の金額の上限やそれを超える慰謝料を獲得できるように全力を尽くしています。