2021年7月8日
民法改正について
2020年4月1日より、改正民法(以下「新民法」といいます)が施行されます。今回の民法の改正は、改正の範囲も広く、内容についてもこれまでの民法を大きく変更するものとなっています。
私たち弁護士の実務に影響する改正点はとても多いのですが、今回はその中の一つである消滅時効について説明いたします。
改正前の民法(以下「旧民法」といいます)では、個人間の貸金債権などは、権利を行使できるときから10年で消滅すると規定されていました。この債権の消滅時効については、新民法では権利を行使することができることを知った時から5年間、または権利を行使できるときから10年間で消滅すると規定されました。
5年と10年の2つの期間があり、やや分かりにくいですが、返済期限を定めて貸した貸付金の貸金返還請求権は、その返済期限が到来した日の翌日から、5年間で消滅時効が完成することになります(例えば2021年5月30日を返済期限として500万円を貸した場合、債権者としては2021年5月30日が到来すれば返還を請求できることを知っていると判断されるため、2021年5月30日が権利を行使できることを知った時にあたると考えられます。)。
また、旧民法では、職業別の短期消滅時効が規定されていました(請負人の工事に関する債権は3年、料理店などの飲食料は1年の消滅時効等)。
この短期消滅時効については、新民法では廃止され、前述の5年と10年の消滅時効に統一されています。
さらに、交通事故等の不法行為で発生した損害賠償請求権についても、消滅時効の期間が変更されるものがあります。新民法では、原則として、不法行為に基づく損害賠償請求権は、損害及び加害者を知った時から3年間で消滅時効が完成します。不法行為の時から20年でも消滅時効が完成すると規定されています。
この点は、旧民法とそれほど変わりません(新民法では20年の期間制限が除斥期間ではなく消滅時効とされています。)。例外として、生命身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効の期間は5年間に延長されました。これにより、交通事故の人身損害による損害賠償請求権の消滅時効の期間は5年となります。一方で、物損については、これまで通り、消滅時効の期間は3年です。
自賠責の被害者請求権についても、これまで通り消滅時効の期間は3年ですので、民法の時効と乖離が生じることになり、注意が必要です。