2021年7月8日
TFCC損傷について
TFCC損傷という怪我の名前を聞いたことがあるでしょうか。
おそらく多くの方は初耳なのではないでしょうか。私も交通事故を担当するようになって、はじめてTFCC損傷という怪我の名前を知りました。この記事では、TFCC損傷の解説をしたいと思います。
TFCCとは、三角線維軟骨複合体という組織のことで、手と手首の間の関節、すなわち手関節に存在します。小指の付け根の先の、手首の丸く出っ張った部分(尺骨茎状突起部)付近に存在します。
このTFCCを交通事故で損傷することがあります。自転車などで転倒した際に、手を強く突き、手首に強い力が加わることで、TFCCを損傷することが多いようです。私が過去に担当したTFCC損傷の事案は、いずれも自転車での転倒が原因でした。
TFCCを損傷すると、手首(手関節)に痛みが生じます。手首を小指側(尺側)に動かしたときに強くなるという点が特徴のようです。また、ドアノブをひねる際にも痛みが強くなるということもあるようです。
このようなTFCC損傷の症状は捻挫の症状と似ているため、事故当初は捻挫と診断されていることもあります。しかし、TFCC損傷の場合、症状が長引くことも多く、手首を利用する動作に支障が出てきます。また、場合によっては手術が治療として選択されることもあり、TFCC損傷は軽い怪我ではありません。
そのため、TFCC損傷という診断がされた際には、後遺障害申請を行い、症状に見合った適正な後遺障害等級を獲得する必要があります。
TFCC損傷で認定される等級ですが、手関節の可動域が4分の3以下に制限されれば、12級以上が認定される可能性があります。可動域の制限が4分の3以下に制限されない場合であっても、神経症状として12級13号、14級9号が認定される可能性もあります。
14級9号以外の等級の認定を目指すには、なんといっても画像上の所見が重要になってきます。
TFCCはレントゲン撮影では映らないため、MRIを利用することになりますが、MRIでも通常のT1、T2強調画像では捉えるのが困難と言われています。T2脂肪抑制画像やT2*強調画像が有用とされていますので、これらの画像の撮影を医師にお願いすることになります。ただ、TFCC損傷の事案を担当して感じることは、読影医によって画像に対する所見がかなり変わるのではないかということです。
実際に、主治医がTFCC損傷の画像所見ありとし、自賠責でもTFCC損傷の画像上の所見ありとして12級13号が認定された事案で、相手方保険会社が、顧問医に鑑定してもらったところ画像上の所見がないとして、TFCC損傷の有無を争ってきたことがあります。
おそらくもっとも確実なTFCC損傷の立証方法としては、関節造影による検査だと考えられます。MRIによる抽出が困難な場合は、関節造影検査を検討することになります。
TFCC損傷においては、関節造影検査は、有力な診断方法されていますが、必ずしも頻繁に行われているわけではないようです。私が担当した事案では、こちらから医師にお願いして関節造影検査を実施してもらうケースが多いです(断られることも多いです)。
以上のように、TFCC損傷は、重篤な障害が残るにもかかわらず、後遺障害等級の獲得が難しい障害の一つです。また、等級が認定された後も、保険会社がTFCC損傷の有無を争ってくることが多いです。
そのため、TFCC損傷との診断がされた場合は、交通事故に詳しい弁護士に相談し、後遺障害等級獲得や交渉、訴訟に備えた検査等を医師にお願いして、後遺障害立証のための資料を集めておく必要があります。
TFCC損傷との診断がされた被害者の方は、できる限り早く交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。