交通事故に関するよくあるお悩み
当事務所では毎月たくさんのご相談やお問い合わせを受けており、さまざまな解決策を提示させて頂いております。その中でも、よくあるご質問について、Q&Aとしてまとめました。
少しでも皆さまの不安や疑問を解決する手助けになれば幸いです。ご自身の状況についてもっと具体的に質問したい、という場合は、当事務所までお気軽にご相談ください。
治療期間中のお悩み
- 交通事故被害について、治療期間中に弁護士に相談するメリットはありますか?
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後遺障害等級の認定は年々厳しくなっていると実感しています。単に「痛い」だけでは後遺障害等級は認定されませんし、どんなに立派な後遺障害診断書を作り上げても後遺障害等級は認定されないことが多いです。
後遺障害等級の認定のためには、どのような治療を受けているのか、医師がどのような治療方針でいるのか、治療期間中にどのような検査を受けていてどのような検査結果だったのか、治療期間中にどのような画像撮影を行っていてどのような画像所見があってどのような経過をたどっているのかといった、治療期間中の事情が最も重要であると考えています。
骨折して関節をうまく動かすことができないとか、頭を打って記憶力が落ちたとか、重傷を負われた方については、特に治療期間中の事情が重要になってきます(いわゆる「むちうち」の方についても同様ですが)。
時間が経過してしまうと、医師の協力を得ることが困難になる可能性もありますし、仮に協力を得られたとしても有意な所見とならない可能性もあります。
直ちに弁護士に依頼すべきか否かは別の判断が必要になってきますが、早急に後遺障害に詳しい法律事務所に相談に行くことをお勧めします。そして、今後の見通しや必要な検査についてアドバイスを受けることをお勧めします。
- 交通事故で怪我をしてまだ治療したいのですが、保険会社から「治療費を打ち切る」と言われました。どうしたらいいですか?
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保険会社から「そろそろ症状固定に」と言われた、「後遺障害診断書を書いてほしい」と言われた方も、こちらのページをご覧ください。
「症状固定」とは、これ以上治療をしても症状がよくならない場合をいい、具体的な事故態様、受傷状況、治療経緯、症状推移、検査結果、画像所見等を勘案して、主治医が判断するものになります。
一方、この「症状固定」となった日をもって賠償金額が確定するため、法律的な判断も必要になってきます。
このように、症状固定の判断は、一次的には医学的見地からの判断、二次的には法律的な判断となってまいりますので、保険会社から「治療費を打ち切る」とか「そろそろ症状固定に」とか「後遺障害診断書を書いてほしい」と言われたら、まず医師に相談して医師の判断を仰ぐべきです。
その上で、法律事務所に相談に行くことをお勧めします。当事務所では、医師の判断を前提に、保険会社からの「症状固定」の判断を受け入れるのか争うのか、受け入れたとしてどのような手続を進めていくのか、争うとしてどのように争ってどのような手続を踏むのか等をご案内させて頂きます。
- 交通事故被害に遭ったときの治療費はどの保険を使って払ってもらったらいいですか?
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対人賠償保険、自賠責保険、人身傷害保険、労災保険、健康保険等があります。
加害者加入の保険会社が対応する場合には対人賠償保険が治療費を負担することになり、これが原則となります。
一方、通勤途中、帰宅途中の事故で、過失相殺の適用がある事故であれば、労災保険を使って治療することをお勧めします。
詳細な言及は避けますが、労災保険の場合には、支払われた治療費のうち、過失割合分について、慰謝料等から差し引かれることがありません。また、特別支給金といって、最後に損害賠償金から差し引く必要の無い金員を受領することもできます。 一方、手続が煩雑になりますし、ご本人様方で動いて頂く場面が増えるというデメリットがあります。また、勤務先の協力を得なければなりませんが、場合によっては労災保険の保険料が上がることがあります。
労災保険を使うか否かについては、このメリットとデメリットを比較衡量して御判断頂くことになります。
労災保険の適用が無い場合に、加害者加入の保険会社が対応してくれないとか、そもそも加害者が任意保険に加入していない場合には、人身傷害保険を使って治療費を払ってもらうことをお勧めします。対人賠償保険と異なり、人身傷害保険であれば、保険を使っても保険料は上がらない仕組みになっているはずですので、ご安心ください。
この人身傷害保険を使う場合に注意しなければならないことは、人身傷害保険を使って支払われるのは賠償金ではなく保険金であり、その支払金額は裁判基準ではなく保険会社の約款に従って計算された保険金額である、という点です。また、人身傷害保険から支払われた保険金は既払い額として賠償金額から控除されます。
ただし、これはメリットに繋がってくるのですが、過失相殺が問題となる事案の場合、人身傷害保険から支払われた保険金は過失相殺分から充当されると考えられている点には注意が必要です。
最後に、健康保険や自賠責保険を使って治療費を負担してもらうことも考えられますが、これらの保険を使うのは、労災保険の適用も無く人身傷害保険の契約も無いなど、極限的な場合に限られると考えたほうがいいです。
※もっとも、保険会社が健康保険を使ってほしいと案内してきたときには、病院に確認の上、保険会社の意向に従っておいた方が得策であることが多いですが。
- 交通事故の加害者が自賠責保険に加入していなかったのですがどうしたらいいですか?
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加害者が任意保険に加入していなかった場合には、まず労災保険の適否と、人身傷害保険契約及び無保険車傷害特約の有無を確認して頂くことになります。これらの保険が適用対象になるのであれば、それぞれの担当者に案内をすれば問題ありません。
一方、加害者が自賠責保険に加入していなかった場合や車検切れだった場合には、自動車損害賠償保障法72条1項に基づき、政府が交通事故被害者の損害をまず填補します。
このとき注意しなければならないのは、治療費について保障されるのは健康保険の本人負担限りであると案内されること、先に政府保障事業制度を利用して清算しなければならないこと、手続が非常に煩雑であること、請求できるのは被害者のみであるため被害者本人に動いて頂かなければならないこと、全体として自賠責保険限りでしか保障されないこと(傷害部分については120万円、後遺障害部分については後遺障害等級の区分に応じた金額のみ)といった点です。
「なぜ被害者がこのような煩雑な手続を取らなければならないのか」とお思いになるかもしれませんが、正しく保障を受けるためにはやむを得ません。
加害者が自賠責保険には加入していないけれども任意保険に加入している場合には、政府保障事業制度を利用して清算した後に、弁護士が介入致します。
- 交通事故に遭って仕事ができなくなったため、日々の生活費をねん出するのが厳しいのですが、どうしたらいいですか?
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交通事故に遭うと、色々な出費がかさみますし、仕事を休まないといけなくなって満足に給料を得ることができなくなることも多いと思います。治療期間中に収入の減少があった場合や、家事従事者が家事労働をすることができなくなったために外食等が増えた場合に発生する損害を休業損害といいます。
そこで、日々の生活費をねん出することができない場合には、まずは、加害者加入の保険会社に休業損害の内払いをお願いすることが考えられます(※内払いとは、平たく申し上げると賠償金の先払いのことです)。
このとき、実際に給料が減少していて会社が休業損害証明書を書いてくれた場合には、保険会社が休業損害の内払いに対応してくれることが多いです。
事業所得者の場合には、確定申告書類を提出することになろうかと思いますが、休業損害を立証することは難しく、なかなか保険会社は内払いに応じてくれません。
家事従事者は、実際の収入の減少を立証することがさらに難しいため、さらに保険会社は内払いに応じにくいです。
もし休業損害の立証資料が無いのであれば、慰謝料等、単に賠償金の内払いをお願いするほかありません。注意しなければならないのは、これらの内払いはいずれも「お願い」に過ぎない、ということです。
すなわち、賠償金の「請求」は「症状固定」となって損害額の全体が明らかになったあとに行うことが原則であり、症状固定になる前の内払いはいずれも「お願い」に過ぎませんので、休業損害や賠償金の内払いに対応してくれないことがあることに注意しなければなりません。
ただし、内払いに応じてくれなかった場合でも「症状固定」となって損害額の全体が明らかになったあとであれば、休業損害を含めた賠償金の支払いに応じてくれることもあるので、不思議なものです。
もし「症状固定」となって損害額の全体が明らかになったあとでは遅すぎるということであれば、ご自身がかけていらっしゃる生命保険や損害保険の活用を検討するか、休業損害等の支払いの仮処分の申立てをすることを検討することをお勧めします。