交通事故に関するよくあるお悩み
当事務所では毎月たくさんのご相談やお問い合わせを受けており、さまざまな解決策を提示させて頂いております。その中でも、よくあるご質問について、Q&Aとしてまとめました。
少しでも皆さまの不安や疑問を解決する手助けになれば幸いです。ご自身の状況についてもっと具体的に質問したい、という場合は、当事務所までお気軽にご相談ください。
後遺障害に関するお悩み
- 後遺障害について被害者請求と加害者請求があると聞いたんですが、被害者請求と加害者請求、どっちがいいですか?
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保険会社に後遺障害診断書を渡して後遺障害の認定申請をしてもらう手続を加害者請求または事前認定といい、交通事故被害者自身で後遺障害の認定申請をする手続を被害者請求といいます。
この後遺障害の認定申請については、最低限必要な書類さえ揃っていれば、あとはどのような書類を添付しても構いません。
そのため、加害者請求をした場合、保険会社がどのような書類を添付しているか分かりません。こちらにとって有利な書類も含めて全ての書類を提出しているかもしれませんし、不利な書類を提出しているかもしれませんし、最低限必要な資料だけしか提出していないかもしれません。
一方、被害者請求をした場合、こちらにとって有利な書類をいくらでも提出することができますし、不利な書類があればその修正を模索することもできますし、修正できず不利な書類を提出せざるを得ない場合も欠陥を補完する別の書類をつけることもできます。
ゆえに、何が有利で何が不利なのか判断することができる能力、書類の修正を模索できる能力、欠陥を補完する能力等が備わっていれば、加害者請求よりも被害者請求のほうが適切な後遺障害等級が認定される可能性が高いです。
一方、これらの能力が備わっていない場合には、頑張って被害者請求をしても結果は加害者請求と変わらないでしょうし、かえって加害者請求のほうが適切な後遺障害等級が認定される可能性が高いかもしれません。
そして、一度出た結果を覆すことは極めて困難です。 被害者請求にするか加害者請求にするかについては、慎重に判断してください。
- 症状固定になったあと、保険会社から後遺障害等級の判断が出たという連絡が来たんだけれども、それが適切な等級か分かりません。
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適切な等級が認定されたのか判断するためには、後遺障害認定申請に用いた一切の資料と後遺障害の認定通知書が必要になります。これらを保険会社から取りつけてください。
自賠責保険の後遺障害等級の認定基準は、労災保険の後遺障害等級の認定基準を引用しており、一定の規範と具体的数値が定められています。
後遺障害等級の判断にあたっては、医証上、残存症状がその規範や数値を満たしているかどうかの判断がまず大事になります。仮に自覚症状として残存症状がその規範や数値を満たしていると主張しても、それが医証に表れていなければ何の意味も為さないため注意が必要です。
次に、残存症状が事故と因果関係を有するものかどうかの判断が必要になります。この因果関係を判断するためには後遺障害の認定通知書だけでは足りず、後遺障害診断書だけでも足りません。
どのような治療を受けているのか、医師がどのような治療方針でいるのか、治療期間中にどのような検査を受けていてどのような検査結果だったのか、治療期間中にどのような画像撮影を行っていてどのような画像所見があってどのような経過をたどっているのか、といった点を確認し、それらが医学的に整合しているかどうかを確認しなければなりません。
これらの事情は後遺障害の認定通知書にも後遺障害診断書にも必ずしも表れてこないのです。
そのため、後遺障害等級の判断が適切かどうか判断してほしいというのであれば、後遺障害認定申請に用いた一切の資料を取りつけて持ってきていただく必要があります。
- 症状固定になったあと後遺障害の認定申請の手続に進んだのですが、これだけ痛いのに後遺障害として認定されませんでした。なぜでしょうか。
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別のページでも申し上げたとおり、自賠責保険の後遺障害等級の認定基準は、労災保険の後遺障害等級の認定基準を引用しており、一定の規範と具体的数値が定められています。
後遺障害等級の判断にあたっては、医証上、残存症状がその規範や数値を満たしているかどうかの判断がまず大事になります。仮に自覚症状として残存症状がその規範や数値を満たしていると主張しても、それが医証に表れていなければ何の意味も為さないため注意が必要です。
すなわち、「痛い」と言っているだけでは後遺障害としては認定されないのです。残存症状が一定の規範と具体的数値を満たしていないのであれば、どれだけ痛くても後遺障害としては認定されません。
また、仮にその「痛み」に関する主張が一定の規範と具体的数値を満たす内容であったとしても、「痛い」ことを裏付ける証拠が乏しければ、やはり後遺障害としては認定されません。「痛い」理由を医学的に説明すらできないものも同様です。
どうしても後遺障害として認めてもらいたいということであれば、どのように痛いのか、なぜ痛いのか、といった点を掘り下げて、医師に協力を依頼して医証を得る必要があります。
- 後遺障害診断書をしっかり書いてもらったのに後遺障害として認定されませんでした。なぜでしょうか。
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最近、色々な法律事務所が後遺障害診断書の作成のサポートをしているとうたっています。 たしかに後遺障害診断書も大事ですが、後遺障害診断書をしっかり書き上げるだけでは残存症状が等級の対象になり得るかどうかの判断に資するだけのため、サポートとして十分ではありません。
別のページでも申し上げたとおり、残存症状が後遺障害として認められるためには、残存症状が自賠責保険が定める基準を満たすかどうかだけでなく、残存症状が事故と因果関係を有するものかどうかまで詰めなければなりませんが、後遺障害診断書の作成のサポートだけでは因果関係の判断までケアすることができません。
治療期間中の事情を全く考慮することなく後遺障害診断書の作成だけサポートしていては、かえって、後遺障害診断書を書きすぎてしまって、思うような結果にならないこともあります。
このあたりは当事務所の経験則でありノウハウの一部でもありますのでこれ以上は申し上げられませんが、認定された等級に御不満の方は、保険会社から後遺障害認定申請に用いた記録一式を取りつけて当事務所に相談にお越しください。認定された等級が適切な等級か否か、判断させて頂きます。
- 交通事故に遭ってから1ヶ月後に新たな症状が出たり症状が悪化したりしているのですが、後遺障害として認定されますか?
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当事務所では事故から時間が相当経過してから発生した症状を遅発症状と呼び、時間が相当経過してから悪化した症状を亢進症状と呼んでいます。
これらの症状については、その症状が遅発することや亢進することが医学的に説明できるのであれば後遺障害の対象になりますが、医学的に説明できないのであれば後遺障害の対象にはなかなかなりません。
そして多くの場合、症状が遅発することや亢進することは、医学的には説明できません。なぜならば、事故に遭うと初期の症状が一番重く、その後は真摯に治療を受けていれば自然治癒力と相まって症状は軽減していき新たに症状が発生することは通常考えられないからです(例外もあるので一度ご相談して頂きたいです)。
これと同じような問題として、治療の初期に発生した症状でも、その症状が事故と関係のある症状かどうか分からないからか、症状に気付かない、医師に症状を伝えるのが遅れる、その結果、医証上は遅れて症状が現れたように見える、という問題があります。このような症状も、残念ながら、遅発症状として不利に扱われることが多いです。
後遺障害の判断は書面審査であり、具体的事情の多くは考慮しませんので、「~だから症状に気付かなかった」「~だから症状を伝えるのが遅くなった」といった理由づけは通用しないことが多いのです。
そのため、もし事故の前には無かった症状が事故後に現れたのであれば、すぐに医師に相談して、カルテに残したり整形外科以外の治療先の案内を受けてほしいです。