交通事故に関するよくあるお悩み
当事務所では毎月たくさんのご相談やお問い合わせを受けており、さまざまな解決策を提示させて頂いております。その中でも、よくあるご質問について、Q&Aとしてまとめました。
少しでも皆さまの不安や疑問を解決する手助けになれば幸いです。ご自身の状況についてもっと具体的に質問したい、という場合は、当事務所までお気軽にご相談ください。
裁判手続きに関するお悩み
- 交通事故裁判にはどれぐらいの費用が掛かりますか?
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裁判所に収める費用の費目には、印紙、郵券の2種類があります。
郵券は切手のことで、裁判所が相手方に文書を郵送する際に用いられるものです。 そのため、相手方の人数によって金額は変動しますし、途中で不足してくれば追納が必要です。逆に余れば返納されます。
一方、印紙は請求金額によって変動してきます。これは不当な濫訴を避けることを目的としています。 そのため、請求金額が増えれば追納しなければなりませんし、請求金額が減れば一部返納を受けることが可能です。
このほか、文書の開示や一定の客観的事実の調査を裁判所を通して依頼する場合には多少の実費がかかりますし、医療鑑定をするのであれば相当な実費がかかります。
ただし、これらの実費は、弁護士費用特約を使うことができるのであれば、特約によって被害者側の保険会社が支払ってくれますので、ご安心ください。弁護士費用特約を使うことができないのであれば、これらの実費は被害者側で先に負担しなければなりません。
また、弁護士費用特約を使うことができないのであれば、裁判所に収める費用とは別に、当事務所に最終的にお支払いいただく報酬金が15万円上昇してしまいますので、特段の事情が無いかぎり、当事務所では裁判をすることは積極的には勧めていません。
- 交通事故裁判にはどれぐらいの時間が掛かりますか?
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まず訴状を裁判所に提出します。
裁判所が加害者側に訴状を送付します。訴状は手渡しになりますので、加害者の住所が分からなかったり、加害者が受け取りを拒否したりしていると、訴状の送付ができませんので、すぐには裁判手続は始まりません。このとき、実際に加害者が住んでいるところの調査を裁判所から求められますが、ここでの説明は割愛致します。
訴状の送付が完了したとき、訴状の送付があってから大体1ヶ月から2ヶ月後に、第一回期日が開かれます。
第一回期日は訴状が提出されていることを確認するのみで、相手から簡単な反論は出ても、詳細な反論が出ないことは多々ありますし、相手が裁判所に出廷してこないことも多々あります(これは民事訴訟法上で被告側に認められた権利と言っても過言ではないと思います)。
第二回期日は第一回期日の一ヶ月後に開かれることが多いです。
このときまでには相手から詳細な反論が出てきます。ただし、ごくまれに、相手がカルテの開示を求めてきて、開示されたカルテをもとに相手保険会社の顧問医が意見書を作成し、その意見書をもとに相手が反論の書面を用意してくることもあります。そのときには第二回期日や第三回期日は遅めに設定されるため、裁判は長期化します。
相手にも反論する権利がありますし、訴訟指揮は専ら裁判所の権限で行われますので、この訴訟進行を弁護士がコントロールすることはできません(「お願い」程度はできますが)。相手から反論が出てきたら、その反論の書面が提出されたことを確認した次の期日までに、こちら側が再反論をし、そのまた次の期日に相手が再々反論をし、といったように、期日ごとに交互に主張と反論を繰り返して、争点を整理していきます。
この過程で、相手保険会社の顧問医の意見書が出てきたときには、こちらも主治医の先生に医療照会への御協力をお願いしなければなりませんので、主治医の先生とは良好な関係を保っていただきたいです。
この主張と反論には、短ければ4ヶ月、大体6ヶ月、長ければ1年近くの時間を要します(1年以上かかることもあります)。案件によって争点が多岐にわたったり、請求金額が大きくなったりすれば、長期化する傾向にあると考えて頂いて構いません。
主張と反論が尽きてくると、一度裁判所から和解案の提示がなされます。 この和解案を受け入れればそこで裁判は終結しますし、受け入れなければ尋問手続に移行します。
尋問期日は、和解が決裂してから大体2ヶ月から3ヶ月後に開かれます。
裁判所でも準備が必要のため、比較的遅めに期日が設定されることが多いです。この尋問期日は平日に開かれますが、被害者の方には都合をつけて頂いて出廷して頂きます。尋問後は、再度和解案が提示されることもありますし、そのまま判決となることもあります。
判決となる場合には、判決が下される1ヶ月ほど前に最終準備書面を提出して、判決期日を待ちます。※提出しないこともあります。判決は尋問が行われてから大体2ヶ月後から3ヶ月後に下されることが多いです。
トータルで、訴状を提出してから裁判が終結するまで、どんなに短くても6ヶ月はかかります(争点が簡易で、かつ裁判所からの和解案を受け入れる場合)。長ければ、訴状を提出してから第一審の裁判が終結するまで、1年6ヶ月から2年ぐらいかかります(それ以上かかることもあります)。
ここで「第一審の裁判が終結するまで」と申し上げましたが、日本の裁判は三審制のため、第一審の裁判の結果に不服の場合には、こちらから控訴を提起することもありますし、相手から控訴を提起されることもあります。そうなると、最終的に賠償金を得られる時期はさらに延びます。
控訴審は、第一審の判決が当事者に送付されてから2週間以内に提起する必要があり、控訴を提起してから大体2ヶ月以内に控訴審の第一回期日が開かれます。第一審で主張立証は尽きているというのが建前ですので、原則として控訴審は一回結審です。そのため、控訴審では第一回期日に全精力を費やさなければなりません。
第一回期日が開かれたのち、控訴審でも裁判所から和解案の提示がなされます。和解がまとまればそこで終結となりますし、和解がまとまらなければ、最後の和解期日から1ヶ月程度で控訴審の判決が出ます。
なお、交通事故の場合、加害者が保険に加入していることが多いため、判決が出たあと加害者側が任意の支払に応じないということは考えられませんが、加害者が保険に加入していなかった場合、加害者本人に強制執行しなければなりませんので、最終的に賠償金を得るまではさらに時間がかかります。個別的に御相談頂ければ幸いです。
- 交通事故裁判には被害者本人も出廷しないといけないんですか?
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弁護士に依頼した場合、裁判に被害者本人が出廷する必要は原則としてありません。
ただし、尋問前の和解がまとまらず、尋問手続に移行する際には、被害者本人を尋問しなければならないことが多いため、その場合には裁判所に出廷して頂きます。裁判期日は平日に開かれますが、尋問手続となった際には都合を調整して頂かなければなりません。
また、和解期日に出廷して頂くことを求めることもあります。 直接裁判官と話して頂いた方が、双方の理解が深まって和解が成立しやすくなると考えたときに、和解期日への出廷を案内することが多いです。
なお、弁護士と被害者本人がともに裁判に出廷することも問題ありません。 ただし、争点が整理されるまでの期日は殆どが書面でやり取りすることになりますので、被害者本人が出廷することの実益はあまりありません。
また、実際に被害者の方で出廷を希望されるのであれば、法廷での発言は有利にも不利にも受け取られますので、事前に打合せをさせて頂くこともあります。
- 裁判したくないんですが、保険会社との示談交渉がまとまらなかったら裁判するしかないですか?
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加害者に事故の重大さを分かってほしいから裁判をするという意向を持っている方もいらっしゃいますが、刑事裁判と違って民事裁判に加害者本人が出廷することは殆どありません。
特に、加害者本人が対人賠償保険に加入している場合、加害者本人でも保険会社の担当者でもなく、保険会社と顧問契約を結んでいる弁護士が加害者本人を代理して出廷してきます。
その弁護士は、加害者本人の代理ではありますが、保険会社と顧問契約を結んでいますし、実際に賠償金を支払うのは保険会社ですので、保険会社の意向も踏まえて弁護活動を行います。 そのため、加害者本人は尚更遠い存在になります。
また、事故態様や過失割合に争いがないかぎり、加害者本人を尋問する実益は無いことが多いため、尋問手続にも加害者本人は来ないことが多いです。一方、事故態様や過失割合に争いがある場合には、加害者の尋問を行うことが多いです。
加害者本人が守られているとお思いになるかもしれませんが、被害者側としても賠償金の回収が容易であるというメリットがあるので御理解頂くほかありません。
- 交通事故裁判(民事裁判)には加害者本人は出廷するんですか?
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示談交渉がまとまらなかったとき、取り得る手段としては概ね以下の5つの選択肢があります。
① 訴訟を提起する
② 調停を申し立てる
③ 弁護士会または日弁連の示談斡旋の手続を利用する
④ そんぽADRの手続を利用する
⑤ 交通事故紛争処理センターの手続を利用するそれぞれのメリットデメリットについてお伝えします。
まず、①訴訟を提起するメリットとデメリットについてです。
訴訟を提起するメリットは白黒はっきりつく、最終的な判断権者である裁判官が被害者側が優位と判断すれば相手側を説得してくれる、他の手続と異なり訴訟を提起して判決となった場合には各損害項目の合計金額の1割が弁護士費用として認定されることが多く事故日から年5パーセントの遅延損害金も付加される、といった点があります。
一方、訴訟を提起するデメリットは、最終的な判断権者である裁判官が相手側優位と判断すれば被害者側を説得してくる、最後の解決手段のため後戻りできない、証拠が厳格に求められる、時間も費用も①から⑤の選択肢の中で一番かかる、といった点があります。
次に、②調停を申し立てるメリットとデメリットについてです。
調停を申し立てるメリットは、調停委員が裁判官と相談したうえで話し合いをまとめようとしてくれる、訴訟に比べて調停手続自体は時間も費用もかからないことが多い、訴訟手続の場合ほど証拠を厳格に求められない、といった点があります。
一方、調停を申し立てるデメリットは、あくまでも話し合いに過ぎないため話し合いがまとまらなかったときには徒労に終わる、調停委員が交通事故に詳しいとは限らない、といった点があります。
それから、③弁護士会または日弁連の示談斡旋の手続を利用するメリットとデメリットについてです。
弁護士会または日弁連の示談斡旋の手続を利用するメリットは、弁護士が中立公正な立場で話し合いをまとめようとしてくれる、訴訟や調停と比べて時間も費用もかからない、といった点があります。
弁護士会または日弁連の示談斡旋の手続を利用するデメリットは、話し合いがまとまらなかったときには徒労に終わる、あっせん案に対する拘束力が弱い、といった点があります。
④そんぽADRを利用するメリットについては、費用がかからない、あっせん案に対する拘束力が③弁護士会または日弁連の示談斡旋の手続ほど弱くはない、といった点があります。一方のデメリットは、審査機関が東京にしかないという点があります。なお、このそんぽADRを利用する方は少ないのが現状です。
最後に、⑤交通事故紛争処理センターのメリットとデメリットについてです。
⑤交通事故紛争処理センターを利用するメリットについては、費用がかからない、訴訟よりも早く終わる、嘱託弁護士のあっせん案で示談できなかった場合審査会の裁決が出るがこの裁決に保険会社は拘束される、審査会の裁決に不服の場合は訴訟を提起することができる、といった点があります。
一方、⑤交通事故紛争処理センターを利用するデメリットは、鹿児島の場合は管轄は福岡になる、審査会の裁決に移行する際には一度本人が福岡に行くことが望ましい、簡易迅速な手続で斡旋案や審査会の裁決を出すことになるため訴訟を提起した場合よりも譲歩しなければならないことがある、といった点があります。
事案によって、どの手続を取ったらいいかが変わってきますので、交渉がまとまらなかった場合には適宜ご案内させて頂きます。